入れ歯

歯が抜けて入れ歯を入れているものの、入れ歯に不満のある方は多いと思います。噛めない、痛い、落ちやすいなど、不満の理由はさまざまでしょうが、どうして多くの方がこのような不満を抱くのでしょうか。

私は、患者さんに喜んでいただける入れ歯治療を、長年追い求めてきました。

その結果、気付いたことがあります。
それは「人の口の中は千差万別。誰かと同じ入れ歯など1つもない」ということです。

口の中は、歯並びだけでなく、顎の状態、顎の関節の動き方、噛み癖などさまざまな要因が複雑に関係し合っています。

そうした多くの要因を考慮して、違和感のない入れ歯を作るには、一人ひとりの口の中の状態に合わせ、さまざまな手法や技術を組み合わせて入れ歯作りをする必要があります。

そのためにお口の中の状態を正確に把握します。そして、患者さんの悩みや要望にしっかりと耳を傾け、歯科医師として真摯に向き合います。

そうしてはじめて、患者さんそれぞれに合った入れ歯を作ることができるのだ、と私は思います。入れ歯が合わず困っている方が笑顔になること。それが私の願いです。
入れ歯の研究は奥が深く、今も新しい素材や技術の開発が進められています。私も日々の研究を怠らず、患者さんの想いにしっかりと応えていきたいと思います。

入れ歯製作には、さまざまなセオリーや手法があります。
そうしたセオリーに基づき基本的な手法を駆使すれば、とりあえず一定の水準の入れ歯を作製することができます。
しかし、口の中の状態は年を重ねるごとに変化します。噛み合わせや歯並びも舌や頬の筋肉の成長や衰えによって変わっていきます。
そうした変化に対応するにはセオリーだけでは足りず、知識や経験に基づいて柔軟に判断する必要が生じます。

このことを歯科医や歯科技工士らが理解していないと、結局、長く使うことのできない「合わない入れ歯」になってしまいます。

もちろんセオリーも大切ですが、人の口の状態の変化はセオリー通りにはいきません。
入れ歯は機械の部品ではなく、生きている人が使うものなのです。

こうした考えを基本に据え、事前に歯並びや口の中の変化を予想したうえで入れ歯を設計する。
これが、私の考えるプロとしての最低限の姿勢です。