虫歯が悪化したときに行われる、いわゆる「神経を抜く」治療が根管治療です。
当院では根管治療の際、治療期間の短縮と、再発や抜歯を防ぐことを目指しています。そうした当院の治療について、詳しく説明しましょう。
説明の前に、米国で行われたある研究を紹介します。これは、調査結果を日本の診療制度に当てはめた表です。
根管治療の精度 | 被せ物 | 成功率 | |
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パターン① | ◎ | 自費 | 91.4% |
パターン② | 〇 | 自費 | 67.6% |
パターン③ | ◎ | 保険 | 44.1% |
パターン④ | △ | 保険 | 18.1% |
精密な根管治療を行い、全額自己負担となる素材の被せ物を使った場合、当然のことですが、治療の成功率は91%と最も高くなります。
治療の精度が低い上、被せ物も保険適用の素材であれば、逆に80%以上のケースで再発してしまいます。
一方、精密な治療を行っても、被せ物の素材が保険適用の素材であれば、成功率は半分以下になってしまいます。
当院では保険適用、自費診療のどちらでも根管治療を行っています。決して保険適用だからという理由で、手を抜くようなことはありません。
しかし、自費治療でしか使うことができない素材があり、そうした素材を使えば治療の成功率も高まるのも事実です。
当院では、治療の前に詳しい検査を行い、自費診療を含めた複数の治療法を提案いたします。
根管治療の成否は治療の精度の高さだけでなく、使う素材にも左右されることを、ぜひご理解ください。
では、精度の高い根管治療とはどのような治療でしょうか。当院では「精密」「無菌」にかかっていると考えます。
根管治療を精密に行うための当院での取り組みを紹介します。
歯科治療は小さな歯を相手に行います。それを肉眼と経験に頼っていては、なかなか精度は上がりません。
そこで当院では「マイクロスコープ」という歯科用顕微鏡を使っています。
マイクロスコープを使えば、治療部位を高倍率で拡大できるので、処置しなければならない部分を詳細に確認できます。
根管治療の成功率を高めるには、必要不可欠な機器だといえるでしょう。
千円札を肉眼で見たときの画像と、マイクロスコープで見たときの画像を並べました。どちらのほうが患部を正確に確認できるか、その差は一目瞭然でしょう。
マイクロスコープを使い患部の取り残しをなくすことで、虫歯の再発、さらに、抜歯という最悪の結果を回避できる可能性が高まります。
次に当院で治療を行った症例を紹介します。
黒い影になっているのが「根尖病巣」といい、虫歯菌によって炎症を起こしています。治療後には影がなくなり、きれいになっているのが分かります。
マイクロスコープを使うと処置の効率も上がるので、患者さんにとっても通院回数を減らせるというメリットがあります。
従来の治療であれば、根管治療には4〜5回の通院が必要でした。その点、効率的な治療によって通院回数を3回程度に減らすことができます。ケースによっては1回で治療が終わることもあります。
根管内の汚染された部位を取り除く道具に「ファイル」があります。細い錐(きり)のような形をしています。
ファイルは従来、ステンレス製のものが主流だったのですが、ニッケルチタン製のファイルが登場し、より確実で精密な治療が可能になりました。当院でもニッケルチタンファイルを使用しています。
根管はまっすぐ通っているのではなく、歯の中で曲がっています。
ニッケルチタンは、ステンレスに比べて柔軟性があるので、根管の形状に合わせて変形するので、しっかり患部まで先端が届きます。
従来のステンレスファイルでは、しっかり汚染部位を取り除けないことがあり、慎重に処置を行わないと根管内を傷つけてしまう可能性もあります。
精度の低い根管治療を受けると、高い確率で虫歯が再発してしまいます。
そして、また同じような精度の低い治療を受けると、何度も再発を繰り返し、最後は歯を抜かなければならなくなります。
どうして、根管治療を受けたのに、虫歯が再発してしまうのでしょうか。
それには2つ理由があり、1つは汚染個所の取り残し、もう1つは、治療中の細菌の混入です。
取り残しはマイクロスコープやニッケルチタンファイルなどを使うことで防ぐことができます。
細菌の混入は、主に唾液が患部に入ることで起こります。
当院では、どのように治療中の細菌の混入を防ぎ、根管を無菌状態にまで清掃しているのか、その取り組みについて紹介します。
ラバーダムと呼ばれる薄いゴムシートを使い、治療する歯だけを残して口の中を覆う方法をラバーダム防湿と言います。
ラバーダム防湿を行うと、多くの細菌が含まれる唾液が治療中の歯の中に混入するのを防げます。
これによって歯科医師は唾液の混入を気にすることなく治療に専念できますし、確実に新たな細菌感染のリスクを抑えることができます。
根管治療では、ヤスリのような機械を使って歯の内部の汚れを削り取っていきます。
これを機械的清掃といいますが、削ったあとにはどうしても削りカスがでてしまいます。
こうした削りカスにも多くの細菌が含まれるので、最後にはキレイに取り除かなくてなりません。
治療した歯の中に細菌が残ってしまう理由には、唾液の混入のほか、この削りカスの取り残しもあります。
このため、当院では「EDTA(無機質溶解剤)」という薬剤を使って根管内の清掃を行います。
EDTAを機械的清掃の終わった歯の内部に注入すると、削りカスを溶かし象牙質を修復してくれます。
これによって、虫歯の再発を防ぎます。
機器や薬剤で根管内を清掃した後は根管内の空洞を、ぴったりと埋めてしまわなければなりません。これを根管充填とといいます。
空洞になった根管内の空洞を完全に塞いでしまわなければ、再び細菌が混入して虫歯が再発してしまう恐れがあります。
一般的な処置では「ガッタパーチャ」というゴムのような素材で空間を埋めるのですが、根管内は曲がりくねった複雑な構造をしているため、ガッタパーチャでは完全には塞ぎきれないことがあります。
その点、当院が採用している「MTAセメント」は強い接着性があるため、根管内の空間を隙間なくピッタリと塞ぐことができます。
また、殺菌や歯の組織を再生させる作用もあるため、虫歯の再発を防いで歯を丈夫に保ち長持ちさせてくれます。
治療の説明 | 強い殺菌作用をもち、口腔内のように水分の多い状態でも硬化する性質がある、歯科用の水硬性セメントを用いた治療。ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、酸化ビスマス、石膏などが主成分とされる。 |
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費用 | 〇〇万円 (税込) |
リスク/副作用 | 経年に伴い、変色する場合がある。根管内に入れた場合、固いので除去が困難になる。 |
虫歯が進行して、歯の根元に病巣ができると、根管治療の難度もあがります。
たとえば、根管の先端に膿がたまる「歯根嚢胞(のうほう)」を発症すると、通常の根管治療では時間がかかってしまい、その分、再発リスクも高まります。
そのため当院では、こうした難症例に対して「歯根端切除術」を行うことがあります。
歯根端切除術とは歯茎を切開し、膿が溜まるなどした根管の先端を切除する治療法です。
他の歯科医院で「抜歯せざるを得ない」と判断された歯でも、歯根端切除によって抜歯せずに済むケースもあります。
すべてのケースに適用できるわけではありませんが、一度当院にご相談ください。
治療の説明 | 外科的に根尖(根の先端)を切断すると同時に膿の袋を摘出する処置法 |
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費用 | 〇〇万円 (税込) |
リスク/副作用 | 歯肉を触りますので歯肉退縮が起こる可能性がある。 また外科処置を伴うので、術後腫れや違和感が生じる場合もある。 |
大きな病気をしたときに、他の病院で治療法について意見を聞くセカンドオピニオンも一般的となってきました。
私たちは歯科治療でもセカンドオピニオンが必要だと考えています。
当院ではマイクロスコープの写真撮影機能を使ったセカンドオピニオンに対応しています。
歯科治療は使用する機器や歯科用素材によって、治療の効果が異なります。
しかし、どこの歯科医院も同じものを使っているわけではありません。
このため、長期間にわたって治療を受けているにもかかわらず、虫歯の再発を繰り返す患者さんも多くいらっしゃいます。
肉眼での治療には限界があり、マイクロスコープで見なければ根本的な原因が分からないこともあります。
根本的な原因を見逃したままで治療を続けても、完治は難しく最終的には歯を抜かなくてはならなくなります。
進行した虫歯を完治させ、歯を守るには、できるだけ早くマイクロスコープ写真分析によって根本的な原因を突き止め、適切な処置を行うことが欠かせません。そのために当院もできるだけの協力をいたします。
「1回の来院」で完了します。
ご連絡いただく際は「マイクロスコープ写真分析希望」とお伝えください。
問題部分の歯をマイクロスコープで確認します。その際、マイクロスコープ視野での写真を撮影します。
複数の撮影画像をもとに、どの部分に問題の原因があるかを検討分析し、同じ画像を見ながらご説明します。
どのような治療が必要かをご提案します。
根管内の清掃と空間の密封が終わると、被せ物をするために「コア」と呼ばれる支台を入れます。
当院では、治療した跡が目立たず丈夫な「ファイバーコア」を採用しています。
被せ物を補強し、土台となるのが「コア」です。ファイバーコアは天然の歯と区別がつきにくいため目立ちにくく、丈夫で長持ちする素材です。
裏側から光を当てたとき、どの程度光が通るのか、「光透過性」を比較したものです。
左がファイバーコア、右が金属コアですが、ファイバーコアのほうが光を通しているのが分かると思います。
ファイバーコアはよく光を通すのですが、金属コアは光を通しにくいため、どうしても影になってしまいます。そのため、天然の歯と並ぶと見た目に違和感が生じます。
ファイバーコアは柔軟性があり、大きな力がかかっても、しなって力を分散させることができます。
しかし、金属コアは柔軟性に乏しいため、歯を食いしばるなどして大きな力がかかった場合、力が歯の根元に集中し、歯根が破損したり折れたりしてしまうことがあります。
保険適用で行われる根管治療の成功率は50%前後と言われます。つまり、根管治療を受けた人の約半数が、再治療を受けることになっているのです。
しかも、根管治療の再治療は、成功率が大幅に下がるという調査結果もあります。再治療での成功率は、保険診療の場合で20%ほど、自費治療でも70%ほどです。
根管治療を行うたびに歯は大きなダメージを受け、最後は抜歯せざるを得なくなってしまいます。
こうした数字を見れば、最初の治療がいかに大切かが分かると思います。治療の善し悪しによって歯の寿命は大きく左右されます。
どうか、歯科医院選びや治療法の検討は長い目で見て慎重に行い、最善の選択を行っていただきたいと思います。
当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。